家族に給与を支払って節税できる「青色事業専従者給与」。気になるのは金額の決め方だけでなく、
- 結局いくらにすれば一番得なのか?
- 専従者本人の確定申告は必要?
- 配偶者控除とどっちが得?
- 途中で金額を変えたいときはどうする?
など、実務で迷いやすいポイントが意外と多いです。判断を誤ると専従者給与そのものを否認されるリスクもあります。
結論からいうと、所得税のかからない【月8万円(年96万円)】あたりが、多くの人にとって一番バランスの良い金額です。
この記事では、専従者給与の基本・届出方法・金額の決め方から、専従者本人の確定申告の要否、配偶者控除との損得比較まで、実務目線でわかりやすく解説します。
- 青色事業専従者給与とは?
- 白色申告(専従者控除)との違い
- 専従者給与はいくらが得か
- 専従者給与の決め方
- 届出書の提出期限・書き方
- 源泉徴収・年末調整の流れ
- 専従者本人の確定申告は必要か
- 実際の節税効果
- 配偶者控除はどうなるのか
- 扶養控除はどうなるのか
- 変更方法・ボーナスについて

1. 青色事業専従者給与とは?

通常、生計を一つにする家族への給与は、労働の対価なのか生活費なのか区別しづらいことや、配偶者控除や扶養控除と重複する恐れがあることから「経費」にできない決まりになっています。
ただし、青色事業専従者に対して払う青色事業専従者給与(以下、専従者給与)は、所定の条件を満たせば必要経費として計上できます。
専従者給与の要件
(1)青色事業専従者に支払われた給与であること。
イ 青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること。
ロ その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること。
ハ その年を通じて6か月を超える期間(一定の場合は事業に従事することができる期間の2分の1を超える期間)、その青色申告者の営む事業に専ら従事していること。
(2)「青色事業専従者給与に関する届出書」を納税地の所轄税務署長に提出していること。
(3)届出書の記載方法で支払われ、その記載金額の範囲内で支払われたものであること。
(4)青色事業専従者給与の額は、労務の対価として相当であると認められる金額であること。
国税庁:No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除
この制度を利用できるのは「青色申告者」に限られます。白色申告のままでは家族に給与を支払っても経費にはできないので注意しましょう。青色専従者給与を活用すれば、所得を家族に分散でき、事業主本人の所得税や住民税の負担を軽減できます。
専従者の補足
- たまに手伝う程度の人
- 同居しているけど「青色申告者と生計を別にする」配偶者・親族
- 継続的に業務をしている人(1年の半分以上)
- 同居していなくても「青色申告者と生計を一にする」配偶者・親族
2. 白色申告との違い
白色申告では専従者への給与は経費扱いにはできませんが、「事業専従者控除」に基づき、一定金額を所得から控除できます。ただし、控除を受けるには青色申告の専従者給与と同様に「15歳以上であること」「年間6ヶ月を超えて事業に従事していること」などの要件を満たす必要があります。
| 項目 | 青色申告 | 白色申告 |
|---|---|---|
| 経費算入 | 可(払った給与全額) | 不可 |
| 控除額 | – | 年間最大86万円まで |
| 金額設定 | 自由 | 上限あり |
| 届け出 | 必要(1回のみ) | 不要(だたし従事要件あり) |
このように、白色申告にも事業専従者控除はありますが、控除額に上限があり、金額も自由に決められません。青色申告の専従者給与の方が、金額設定も柔軟で、節税効果も大きいと言えます。
3. 専従者給与はいくらが得か

専従者給与に法律上の明確な上限はありません。とはいえ「多く払えばその分お得」というわけでもなく、税金面でちょうどよいラインが存在します。
結論から言うと、多くの人にとってバランスが良いのは「月8万円(年96万円)」です。この金額なら、専従者本人に所得税がかからず、住民税も最小限(均等割のみ)に抑えられます。それでいて、事業主側は年96万円を丸ごと経費にできるため、世帯全体の税負担をしっかり減らせます。
はた坊私も専従者だった頃は月8万円にしていました。税理士さんにも「まずはこのあたりが無難」とよく言われる金額です。
なぜ8万円なのか?
専従者本人の給与収入が年96万円だと、所得税がかかりません。給与所得控除と基礎控除の範囲内におさまるためです。住民税もごくわずかな負担で済みます。
- 所得に応じてかかる「所得割」は発生しない
- 定額の「均等割」(自治体により年5,000円前後)のみ
- 自治体によっては均等割も非課税になる(詳しくはお住まいの自治体にご確認ください)
なお、事業主側の税金が実際にどれくらい変わるのかは、9章で具体的な数字を使って比較しています。
4. 専従者給与の決め方
月8万円はあくまで「税金面でバランスのよい目安」です。実際にいくらが妥当かは、専従者の仕事内容や働く時間によって変わります。大切なのは、給与額が労働の対価として妥当であること。仕事の実態に対して給与が高すぎると、税務署から「経費として認められない」と否認されるリスクがあります。金額は、最低賃金や同業他社の相場を参考に、時給換算で決めるのが基本です。
週4日・パート勤務の場合
月80時間(週4日 × 1日5時間) × 時給1,100円 = 88,000円
フルタイム勤務の場合
月160時間(週5日 × 1日8時間) × 時給1,200円 = 192,000円
家事・育児・介護の合間に手伝う場合
月30時間(週3日 × 1日2~3時間) × 時給1,100円 = 33,000円
▶ 我が家のリアルな例
働き方が変わるたびに、専従者給与の額は見直してきました。
①経理だけ:月8万円
専従者の所得税・住民税の負担がほぼかからない金額に設定
②経理 + 別作業も担当:月10万円+賞与
担当業務が増え、勤務時間も増えたので増額
このように、仕事内容・家計の方針・ライフスタイルに合わせて調整していくのがベストです。
5. 専従者給与を出すための届出書|提出期限と記入例
5-1. 提出期限 | いつまでに出す?
専従者給与は、事前に届出が必要です。
【必要書類】:青色事業専従者給与に関する届出書
【提出期限】
- 開業時から専従者がいる場合:開業から2ヶ月以内
- 新たに専従者になる人が出た場合:2ヶ月以内
- 途中から給与を出す場合:給与を出す年の3月15日まで
提出は、税務署の窓口・郵送のほか、e-Taxでも可能です。開業時から専従者がいるなら開業届・青色申告承認申請書とセットで出しておくとスムーズです。
▶ 【完全無料】マネーフォワードで開業届を出す方法|15分で提出までできた体験談
▶ 青色申告承認申請書はいつまでに出す?記入例と出し忘れた時の対策【個人事業主向け】
5-2. 記入例

①開業届や青色申告承認申請書と同じ内容を記載します(納税地は住民票の住所、それ以外に事業所があれば併記)。

②-①:我が家の届出書の実例
②-②:国税庁HP記載の記入例
- 専従者の氏名・続柄・年齢を記入
- 経験年数:業務の経験年数
- 資格等:あれば記載
- 給料・賞与:支払時期、金額を記入
- 昇給の基準:基準があれば記入
金額は仕事内容・作業時間・相場などに応じて記載します。
【ポイント】
- 届出した金額以上を給与で払っても、超えた分は経費にできない
- 賞与は支払えない年があってもOK
- 払う可能性がある場合は書いておく
【我が家の場合】
- 実際払っていたのは80,000円
- 業績・残業に応じて調整できるよう120,000円で届出
- 賞与は売上に応じて支給
- 家族から経理担当を引き継ぎしたため「変更理由」も記載
5-3. 届出を忘れた場合
届出を出していない年は、専従者給与を経費にできません。罰則はありませんが、その分だけ所得が高くなり、税金が増えます。気づいた時点ですぐに提出しておけば、翌年分から経費にできます。
5-4. 年の途中で専従者になる場合
- 結婚して妻が専従者になる
- 会社を退職した家族が専従者になる
など、年の途中で専従者になるケースがあります。
専従者は「1年のうち6ヶ月を超えて従事する必要がある」のですが、年の途中からで6ヶ月に満たない場合も、従事可能期間の1/2を超えて従事すれば給与を経費にできます。
例)8月に結婚したなら5ヶ月のうち2ヶ月半を超えて従事すればOK。
はた坊届出は専従者になってから2ヶ月以内に提出しましょう。
6. 専従者給与を出すときの注意点

実際に給与を出す場合は、単に「払ったことにすればいい」というものではありません。税務署に「実態があるのか?」とチェックされるポイントはこちらです。
- 毎月決まった日に払う(年1回のまとめ払いはNG)
- できれば専従者本人の口座へ振り込む
- 給与明細や振込記録を残す
- 勤務日・時間・業務内容を記録しておく
専従者は私的な手伝いと業務の区別が曖昧になりがちです。「働いた記録」と「払った記録」の両方を残しておくと、いざというときに実態を証明できます。
- 給与の支払いは毎月25日
- 毎月銀行でおろして通帳記帳+メモ
7. 専従者給与の源泉徴収と年末調整
家族に給与を払い始めると、事業主は「給与を払う側」の立場になります。会社員を経験したことがある方なら、給与明細から所得税が引かれていたり(源泉徴収)、12月にお金が少し戻ってきたり(年末調整)しませんでしたか?
あの手続きをしていたのは会社の経理担当で、専従者に給与を払うと事業主自身がその手続きをする必要があります。
- 「給与支払事務所等の開設届出書」「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を出す(最初の1回だけ)
- 扶養控除等申告書を書いてもらう(毎年)
- 毎月給与から所得税を天引きする(源泉徴収税額表)
- 納付書を出す(年2回)
- 年末調整をする(12月)
- 源泉徴収票・給与支払報告書を作る(翌年1月31日まで)
並べるとかなり多く見えますが、給与が105,000円未満だと源泉徴収額が0円になるため、3章でおすすめした月8万円では毎月の天引きと納税は発生しません。とはいえ、それ以外の手続きは給与額にかかわらず必要です。届出や扶養控除等申告書はもちろん、年末調整も行います。納付書・源泉徴収票・給与支払報告書は税額0円のまま提出します。
手続きの流れや書き方は、こちらの記事で解説しています。
▶ 専従者給与の源泉徴収・年末調整の手続きを解説(執筆中)
8. 専従者本人の確定申告は必要?
原則、確定申告は不要です。事業主が年末調整をすることで、1年分の所得税の精算が終わっているためです。ただし、次のような場合は専従者本人が確定申告をします。
- 医療費控除を受けたいとき
- ふるさと納税をして、ワンストップ特例(確定申告なしで控除を受けられる制度)を使っていないとき
- 住宅ローン控除の1年目
なお、月8万円のように源泉徴収額が0円の場合、そもそも納めた所得税がないので、医療費控除やふるさと納税をしても還付されるお金はありません。どちらも事業主名義で行う方が有利になります。
9. 専従者給与で所得税・住民税・国保はいくら安くなる?

専従者給与の節税効果は所得税・住民税だけではありません。国民健康保険料(国保)や個人事業税も下がります。
夫の所得400万円の世帯で、専従者給与が0円の場合と、月8万円(年96万円)払った場合を比べてみます。
【前提条件】
- 夫婦2人世帯(子どもなし)
- 基礎控除のみで計算
- 専従者給与0円の場合は配偶者控除あり
※妻が1円でも専従者給与を受け取ると、夫の配偶者控除は使えなくなります。
※令和8・9年分の基礎控除(104万円)で試算。令和10年分以降は控除額が変わる見込みです。
| 項目 | 夫:400万円 / 妻:0円 | 夫:304万 / 妻:96万 |
| 所得税(夫) | 163,800 | 104,600 |
| 住民税(夫) | 324,500 | 266,500 |
| 国保 | 655,300 | 599,900 |
| 個人事業税 | 87,500 | 39,500 |
| 計 | 1,231,100 | 1,010,500 |
その他控除が入っていないので実際はここまで税金はかかりませんが、専従者給与を月8万円(年96万円)払うと、所得税・住民税・国保・個人事業税をあわせて年間約22万円の負担減になります。
10. よくある質問
- 専従者給与の上限はいくらまで?
-
「法的な上限」はありません。
でも、事業の種類や専従者の役割によって「労務の対価として相当」と認められる金額でなければ経費にできません。同業他社の給与や、4章で紹介した時給換算の考え方を参考にするのもおすすめです。 - 専従者給与は毎月変動してもいい?
-
毎月定額でないといけない決まりはありません。届出した上限を守ればOKです。
- 事業主が赤字の場合、専従者給与はどうなる?
-
貸し倒れや災害、景気変動などで赤字になった場合、相当な理由があれば専従者給与は全額経費になります。赤字によって専従者給与の方が事業主の所得より多くなっても問題ありません。ただし、毎年赤字が続くようなら、専従者給与を支払うこと自体を見直す必要があります。
はた坊私も、赤字で専従者給与が事業主の所得を上回った年がありました。でも1年だけで、生活費とは分けて管理していたのでそのまま継続。事業規模も小さく、税務調査もありませんでした。
- 専従者給与の金額変更はどうすればいい?
-
「青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書」を提出します。
提出期限は決められていませんが、「遅延なく」と規定されているので、変更を決めたら早めに出しましょう。専従者が増える場合も、同じ変更届で対応します。
なお、届出した金額を超えて支給したい場合は、支給前に変更届が必要です。届出額の範囲内でしか経費にできないためです。
- 専従者にボーナスは出せる?
-
「青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書」の「賞与」の欄に記入しておけば、賞与を出しても経費として認められます。
賞与はその年の業績次第で、実際には支給しない年があっても問題ありません。出す可能性が少しでもあるなら、届出の段階で記入しておきましょう。 - 専従者を途中でやめるとどうなる?
-
専従者をやめた時点で経費計上をやめましょう。特に手続きは必要ありません。
- 専従者給与を出さなくなると、事業主の配偶者控除が使えるようになる
- 配偶者控除は、専従者でなくなった翌年から適用される
はた坊私もパート勤務を始めた時に専従者を卒業。専従者給与は使えなくなりましたが、夫の配偶者控除が使えるように。世帯収入アップ、社会保険も加入。
働き方に合わせて、柔軟に切り替えていくのがおすすめです。
- 専従者が年金受給中でも給与は経費にできる?
-
年金受給中の家族でも、青色事業専従者の要件を満たせば経費にできます。
例)事業主が同居の母(年金受給中)を専従者にするようなケース
- 年金受給中かどうかは専従者給与に影響しない
- 事業に従事している必要がある
- 年金(雑所得)+給与所得で所得税が計算される
- 専従者給与を受け取ると、事業主側はその母を扶養控除の対象にできなくなる
- パート掛け持ち・副業しても専従者のままいられる?
-
働き方によっては、専従者のままパートや副業をすることもできます。ただし、勤務時間や収入によっては専従者と認められなくなるケースもあります。
掛け持ちできる条件や注意点は、こちらの記事で詳しく解説しています。
まとめ
- 青色申告をしていれば、配偶者や家族への給与を経費にできる
- 専従者給与を出すには、事前の届出が必要
- 多く人にとってバランスが良いのは月8万円(年96万円)
- 金額に上限はないが、労務の対価として妥当な額であることが必要
- 給与は毎月決まった日に支払い、記録を残しておく
- 所得税・住民税がメインの節約で、国保は思ったほど下がらない
- 家計やライフスタイルに合わせて、金額は柔軟に見直してOK
「家族に給料を出す」と聞くとハードルが高く感じるかもしれませんが、手続きさえ踏めば、合法かつ効果の大きい節税手段です。専従者給与を月8万円出すだけで、年間およそ22万円税負担が軽くなります。
はた坊最初は不安でしたが、やってみると節税効果は大きかったです。せっかく家族が事業を手伝ってくれるなら、節税にもつなげたいですね。
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