家族に給与を払い始めると、事業主は「給与を払う側」の立場になります。会社員を経験したことがある方なら、給与明細から所得税が引かれていたり(源泉徴収)、12月にお金が少し戻ってきたり(年末調整)しませんでしたか?
あの手続きをしていたのは会社の経理担当で、専従者に給与を払うと事業主自身がその手続きをする必要があります。とはいえ、身構えなくて大丈夫です。専従者給与が月8万円なら、毎月の所得税の源泉徴収(天引き)は0円。年末調整で精算するお金も出ません。
ただし、所得税が0円だからと言って何もしなくていいわけではありません。0円と書いた納付書の提出、源泉徴収票の交付、法定調書合計表・給与支払報告書の提出は、金額にかかわらず必要です。
この記事では、専従者給与を払う事業主がやるべき手続きを、最初の届出から翌年1月の書類提出まで6ステップで解説します。
- 最初に出す2つの届出
- 扶養控除等申告書を書いてもらう理由
- 毎月の天引き額の調べ方(源泉徴収税額表の見方)
- 納付書の書き方(税額0円のケース)
- 年末調整の流れ
- 源泉徴収票・法定調書合計表・給与支払報告書の作成
Step1. 2つの届出を出す(最初の1回だけ)
専従者に給与を払い始めたら、1ヶ月以内に「給与支払事務所等の開設届出書」を税務署に提出します。※開業届に給与の支払いを記載していれば不要です。
あわせて出しておきたいのが「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」。給与から源泉徴収した所得税は原則、翌月10日までに納付しますが、この特例を申請すると年2回(7月10日、1月20日)のまとめ納付でよくなります(従業員が常時10人未満の場合)。
申請書はe-Taxでも提出できます。
特例が使えるのはいつから?
納期の特例が適用されるのは、提出した月の翌月に支払う給与からです。
例)6月に申請書を出した場合
- 6月に支払う給与から天引きした所得税は7月10日までに納付
- 7月~12月に支払う給与から天引きした所得税は翌年1月20日までに納付
給与を払い始めるタイミングで一緒に出しておくのが確実です。
Step2. 扶養控除等申告書を書いてもらう(毎年)
専従者に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を書いてもらいます。事業主は保管しておくだけで、税務署への提出は不要です。

これを出してもらっていないとStep3で税金が高くなる(乙欄の額になる)ので、必ず書いてもらいましょう。
いつ書いてもらう?
- 1年目:最初の給料を支払う日の前日までに提出してもらう
- 2年目以降:年末調整のタイミングで翌年分を書いてもらうのが一般的
Step3. 毎月の天引き額を確認する
国税庁の「源泉徴収税額表(月額表)」で天引きする所得税を確認します。

源泉徴収税額表の見方(毎年変更されるため、最新版を参照)
- 一番左の列:その月に払う給与額
- 甲欄:扶養控除等申告書に書いてもらった扶養親族等の人数
給与の金額の行と、扶養親族等の人数の列が交わったところが、天引きする金額です。
※乙欄は扶養控除等申告書の提出がない場合に使います。(税額が大きく変わるのでStep2で必ず書いてもらいましょう)
はた坊専従者給与が月8万円なら、105,000円未満に該当するので源泉徴収額は0円。毎月の天引きは発生しません。
▶ 専従者給与はいくらが得?届出・確定申告・配偶者控除まで徹底解説
▶ 賞与を出す場合
賞与は月額表ではなく、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使います。前月の給与額と扶養親族の人数から算出率を決めて、賞与の金額に掛ける仕組みです。
扶養親族が0人、前月の給与が82,000円未満の時は0%。月8万円で払っていれば賞与を出しても源泉徴収は0円のままです。
Step4. 納付書を出す(年2回:7/10、1/20)
納期の特例を申請していれば、1~6月分は7月10日、7~12月分は翌年1月20日が納付期限です。※特例を申請していない場合は、税額0円でも毎月10日までに納付書の提出が必要になります。
▶ 税額が0円の場合
納める現金がないため、金融機関の窓口では受け付けてもらえません。税務署へ持参・郵送するか、e-Taxで0円のデータを送信します。自宅でできるe-Taxが断然ラクです。
▶ 納付がある場合
- e-Tax + キャッシュレス納付:e-Taxでデータを送信した後、口座引き落とし(ダイレクト納付)・ネットバンキング・スマホ決済アプリなどで納付まで完結します。
- 窓口納付:納付書を記入し、現金と一緒に金融機関や税務署の窓口へ
紙の納付書は税務署の窓口でもらうか、郵送で取り寄せも可能です。納期の特例の承認を受けていれば、時期が近づくと税務署から送られてくることもあります。
▶ 記入例

注意点(例:7月10日納付分、専従者1人月8万円の場合)
納付書は税額が0円でも人員と支給額は実際の数字を書きます(空欄にしない)。税額欄、合計額は0になります。
- 支払年月日:給与の最初と最後の支給日(例:1月25日~6月25日)
- 人員:延べ人数(専従者1人×6ヶ月分なら「6」)
- 支給額:給与の合計額(月80,000 × 6ヶ月 = 480,000円)
- 税額・本税・合計額:すべて「0」
- 納期等の区分:給与を支払った期間(令和8年1月~6月分なら「自0801至0806」)
Step5. 年末調整をする(11~12月)
年末調整は、毎月天引きした所得税の過不足を精算する手続きです。毎月の天引きはあくまで概算で、1年分の給与が確定したところで正しい税額を計算し直します。
▶ 専従者に書いてもらう書類(11~12月上旬)
12月の給与を払う前に、専従者から申告書を提出してもらいます。
- 扶養控除等(異動)申告書(翌年分)
- 基礎控除申告書(※1)
- 保険料控除申告書(生命保険料や地震保険料を払っている場合)
※1:正式名称は「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 給与所得者の特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書」
いずれも事業主が保管するもので、税務署から求められた場合を除き、提出は不要です。
▶ 精算の流れ(12月)
- 1年分の給与総額と、天引きした所得税の合計を集計
- 保険料控除などを反映して、正しい税額を計算
- 差額を12月の給与で精算
天引きしすぎていることが多いので、12月の給与で還付するケースが一般的です。
専従者給与が月8万円なら、天引きした所得税は0円なので精算するお金は発生しません。ただし、年末調整は事業主の義務です。ここで集計した数字がStep6の源泉徴収票・法定調書合計表・給与支払報告書のもとになります。
Step6. 源泉徴収票などを作る(翌年1月31日まで)
年末調整が終わり、1年分の給与が確定したら、書類を3カ所に出します。同じ給与の情報を、専従者本人・税務署・市区町村の3カ所に伝えるための書類です。
| 書類 | どこから届く? | 提出先 | 天引き0円でも必要? |
| 源泉徴収票 | 税務署(年末調整の書類に同封) | 専従者本人 | 必要 |
| 法定調書合計表 | 税務署(11~12月頃) | 税務署 | 必要 |
| 給与支払報告書 | 市区町村(12~1月頃) | 市区町村 | 必要 |
提出期限は3つとも翌年1月31日です。用紙は前年に給与を支払っていれば、事業主の住所に届きます。専従者給与を出し始めた最初の年は届かないことがあるので、そのときは税務署や市区町村のホームページから入手してください。
「税額が0円なら出さなくてもいいのでは」と思いがちですが、給与を支払った事実を知らせるために必要な書類です。
はた坊専従者時代は届いた封書を「これは何?」と放置していました。あとから税理士さんに電子申告完了の連絡を受けて事なきを得ましたが、自分で確定申告している方は忘れないようにメモしておきましょう!
① 源泉徴収票|専従者に渡す
年末調整で確定した1年分の給与額と所得税額を記載して、専従者本人に交付します。支払金額・給与所得控除後の金額・所得控除額の合計・源泉徴収税額が主な記載内容です。

月8万円なら、支払額960,000円、源泉徴収税額0円という形になります。
以前は支払金額が年500万円を超える場合は税務署にも提出が必要でした。令和9年1月以降、市区町村に給与支払報告書を提出すれば、税務署へ源泉徴収票を提出したものとみなされるため、税務署への提出は不要です。専従者本人への交付はこれまで通り必要です。
② 法定調書合計表 | 税務署に提出
正式名称は「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」。1年間に誰にいくら給与を払ったかを集計して報告する書類です。

(A)俸給・給与・賞与等の総額
- 人員:1人
- 源泉徴収税額のない者:1人
- 支払金額:960,000円
- 源泉徴収税額:0円
※「提出媒体」は、e-Taxで送信するなら「14」、紙で提出するなら「30」を記入します。
③ 給与支払報告書|市区町村に提出
給与支払報告書は、住民税の計算のために提出する書類で、専従者が住んでいる市区町村に提出します。所得税は0円でも、住民税の判定のために必要なので必ず提出しましょう。
提出する書類(市区町村によってフォーマットが異なる)
- 給与支払報告書(総括表)
- 給与支払報告書(個別別明細書)→ 源泉徴収票と同じ内容を記入
給与支払報告書は紙で市区町村に提出するか、eLTAXを使って電子申請もできます。


よくある質問
- 専従者給与が月8万円で天引き0円なら、何もしなくていい?
-
天引きする金額が0円というだけで、手続きが不要になるわけではありません。0円でもやることは次の通りです。
- 扶養控除等申告書は専従者にも書いてもらうの?
-
必要です。これがないと税額の高い乙欄で計算することになり、月8万円でも天引きが発生します。提出不要で、事業主が保管しておくだけです。
- 途中で給与を上げたら天引きが発生する?
-
税額表の0円のラインを超えると発生します。令和8年分からは月105,000円未満までが天引き0円です。(所得税が発生しなくても住民税には影響します。)
- 年末調整で生命保険料控除は入れられる?
-
入れることはできますが、もともと税額が0円なら控除しても還付はないので、事業主の確定申告の所得控除に使った方が節税になる可能性があります。
まとめ
専従者給与の源泉徴収と年末調整について解説しました。
- 月8万円なら源泉徴収税額は0円
- 令和8年分からは月105,000円未満までは0円だが、給与に応じて住民税は増える
- 天引きが0円でも、年末調整、納付書の提出は必要
- 納期の特例を申請すれば、納付書は年2回(7/10、1/20)ですむ
- 翌年1月31日までに源泉徴収票(専従者本人)、法定調書合計表(税務署)、給与支払報告書(市区町村)へ提出
天引きが0円だと「何もしなくていい」と思ってしまいがちですが、給与を支払っていることの報告が必要です。専従者給与を月8万円に設定して、納期の特例を申請しておけば、年2回の納付書提出、年末調整、翌年1月の報告書3つだけで済みます。
専従者給与の決め方や届出については、こちらで詳しく解説しています。
▶ 専従者給与はいくらが得?届出・確定申告・配偶者控除まで徹底解説
はた坊自分の場合は何が必要かを洗い出しておけば、毎回悩む必要もなくなり、安心です。こちらで整理しておきましょう。
経理サポートのご案内
経理でお困りではありませんか?
- 経理が苦手で本業に集中できない
- 会計ソフトを導入したけど続かなかった
- 毎月の経理をもっとラクにしたい
- 誰に相談したらいいかわからない
そんな個人事業主の方向けに、経理サポートを行っています。
毎月の経理でお困りでしたら、お気軽にご相談ください。



コメント