個人事業主をしていると、毎年8月ごろに「個人事業税」の納税通知書が届きます。個人事業税は、事業所得が290万円を超えると課税される地方税です。ただし、対象になるのは決められた業種だけ。作家やSE、翻訳家などは、290万円を超えていても対象になりません。
個人事業税は計算方法が所得税や住民税とは異なり、青色申告特別控除が差し引かれません。そのため、確定申告書の所得金額が290万円以下でも、納税通知書が届くことがあります。
支払いは年2回で、8月末と11月末が納付期限です。納付書が届くのは8月上旬から中旬なので、最初の期限までの期間はごくわずか。うっかり納付期限を過ぎてしまったこともあります。
この記事では、13年の実務経験をもとに、個人事業税の基本から支払い方法まで解説します。
- 個人事業税がかかるのはいくらから?
- 課税されない業種と、判断に迷うケース
- 税額の計算方法
- 納付書が届く時期と納付期限
- おすすめの支払い方法
- 経費にできる?勘定科目と仕訳のしかた

1. 個人事業税がかかるのはいくらから?
個人事業税がかかるのは、事業所得が290万円を超える場合です。290万円以下なら課税されません。
計算式はシンプルで、事業主控除の290万円は誰でも差し引ける控除です。税率は業種によって異なります(2章で解説)。
(事業所得(売上ー経費) ー 事業主控除290万円 ー 各種控除) × 税率3~5%
1-1. 290万円以下なのに納税通知書が届くのはなぜ?

個人事業税の計算で使う「事業所得」は、青色申告特別控除を引く前の金額です。青色申告決算書の45番「所得金額」ではなく、その上の43番「青色申告特別控除前の所得金額」になります。つまり、青色申告特別控除は適用されません。青色申告特別控除は所得税を計算するための制度で、地方税である個人事業税には関係がないためです。
例(青色申告特別控除65万円の場合)
- 45番の所得金額:280万円
- 43番の青色申告特別控除前の所得金額:345万円
→ 345万円 - 290万円 = 55万円が課税対象
「確定申告書の所得が290万円以下だから関係ない」と思っていると、通知書が届いて驚くことになります。
1-2. 事業所得から差し引けるもの
43番の青色申告特別控除前の所得金額から、以下を差し引きます。
- 事業主控除:年間290万円を一律控除(開業初年度は月割)
- 損失の繰越控除:青色申告で赤字が出た場合、翌年以降3年間
※専従者給与・専従者控除は43番「青色申告特別控除前の所得金額」ですでに控除済み
※所得税で使える基礎控除、社会保険料控除などは個人事業税では使えません
開業初年度は、事業主控除290万円は営業した月数で割ります。(例:10月開業なら3ヶ月分で725,000円)

このほか、災害で事業用資産に損失が出た場合や、事業用資産を譲渡して損失が出た場合の控除もあります。該当する場合は都道府県税事務所に確認してください。
2. 個人事業税がかからない業種
個人事業税は、すべての個人事業主にかかるわけではありません。法律で定められた70の業種(法定業種)に当てはまる場合だけ課税されます。
2-1.法定業種と税率
法定業種は3つの区分に分かれていて、区分ごとに税率が違います。

2-2. 課税されない業種
法定業種に入っていない仕事は、所得が290万円を超えても課税されません。代表的なものは
- 作家、ライター、翻訳業
- 画家、音楽家などの芸術家
- スポーツ選手
- SE、プログラマー(請負の形態によっては課税対象になる)
- 農業(耕種農業)
業種の判定は都道府県ごとのルールに基づいて行われています。不安な方は確定申告後に管轄の都道府県税事務所に確認してみましょう。
3. 納付書はいつ届く?納付期限はいつ?

個人事業税は確定申告をしていれば自動的に計算され、都道府県から納税通知書が送られてきます。自分で申告書を出す必要はありませんが、届く時期と期限は把握しておきましょう。
納税通知書が届くのは、毎年8月上旬から中旬。第1期分と第2期分の納付書が一緒に入っています。
- 第1期:8月31日まで
- 第2期:11月30日まで
期限が土日祝の場合は翌平日が期限になります。届いてから第1期の期限までが短いので、期限が過ぎないよう注意しましょう。2期分をまとめて払っても大丈夫です。
3-1. 納付書が届かないとき
8月過ぎても届かない場合、考えられるのは次のケースです。
- 法定業種に当てはまらない(2章参照)
- 事業所得が290万円以下だった
- 都道府県によって発送時期が異なる
- 引っ越しなどで住所が変わっている
上記に心当たりがないのに届かないときは、管轄の都道府県税事務所に確認してください。課税対象なのに気づかず放置すると、あとから延滞金がかかることもあります。
3-2. 払わないとどうなる?
納期限を過ぎると延滞金がかかります。
- 翌日~2ヶ月以内:+7.3%
- 2ヶ月以降:+14.6%
上記は法律上の割合で、実際は市中金利に応じて毎年見直され、これより低い割合が適用されます。最新の割合は都道府県のサイトで確認してください。
それでも支払えない場合は督促状が届き、さらに放置すると財産調査や差し押さえに進むこともあります。支払いが難しい場合は、放置せずに都道府県税事務所に相談しましょう。分割納付に応じてもらえる場合があります。
4. 個人事業税の支払い方法
個人事業税の支払い方法は5つあります。おすすめ順に紹介します。

口座振替以外は、どの方法でも納付書が必要です。現金払い以外は領収書が出ませんが、経理上は問題ありません(6章参照)。
eLTax(エルタックス)とは?
地方税をネットで納められる仕組みです。納付書に「eL-QR」というQRコードがあればパソコンやスマホから支払えます。個人事業税の他、住民税、固定資産税、自動車税なども対象です。
「地方税お支払いサイト」でeL-QRを読み取ると、決済方法を選ぶ画面に進みます。
- ペイジー(インターネットバンキング):手数料0円
- クレジットカード(クレカ):手数料あり、ポイント還元あり
- スマホ決済:手数料0円、ポイント還元あり
利用者IDは不要で、納付書があればログインなしで支払えます。預金明細やカード明細にeLTaxで支払ったという明細が残るので領収書がなくても問題ありません。電子申告をする場合や、複数の税金の納付履歴を管理したい方はIDを取得する方法もあります。
① eLTaxで支払う
ペイジー、クレカ、スマホ決済のどれかから選びます。おすすめは手数料のかからないペイジーです。ネットバンキングが必要なので、事業用口座で使えるようにしておきましょう。ペイジーで納付する方法は5章で解説します。
クレカ払いはポイントはつきますが、決済手数料がかかります。手数料は税額に応じて上がるので、還元ポイントと比べてから使いましょう。
スマホ決済はPayPay、au Pay、d払い、楽天ペイなどの請求書払いに対応しています。事前に残高チャージが必要です。対応アプリは変わることがあるので、地方税お支払いサイトで確認してください。
② 口座振替
一度手続きすれば自動で引き落とされます。引き落とし日は納付期限当日(8月31日、11月30日)。申し込みは納付期限の1ヶ月前くらいまでに済ませる必要があるので、初めて通知書が届いた年は間に合わないことが多いです。
オンライン手続きが不安な方は口座振替にして、残高不足に注意しましょう。
③ 現金払い(コンビニ・銀行窓口)
納付書を持って窓口で支払う方法です。領収書がもらえるのはこの方法だけですが、時間と手間がかかります。
5. eLTax(ペイジー)で支払う手順
実際の画面で説明します。スマホでの操作を前提にしていますが、パソコンでもほぼ同じです。手元に納付書とネットバンキングのログイン情報を準備してから始めてください。
Step1. 納付書のeL-QRを読み取る

- 「地方税お支払いサイト」を開いて「お支払いサイトでお支払い」へ
- カメラを起動してeL-QRを読み取り、「お支払いへ進む」へ
- 第1期、第2期をまとめて払う場合は「続けて読み取る」へ
- 税目・納付先・金額を確認して「お支払いへ進む」へ
Step2. 支払い方法を選んで認証する

- 「インターネットバンキング」を選択
- 認証コードを受け取るメールアドレスを入力
- メールに届いた認証コードを画面に入力(届かないときは迷惑メールフォルダを確認)
- 「外部サイトを開く」を選択
Step3. 銀行を選んで支払う

- 金融機関の一覧から自分の銀行を選ぶ
- ネットバンキングにログインして、画面の指示通りに進む
- 納付先・金額を確認して支払いを実行
- 「支払完了」と表示されれば完了
(画像例:GMOあおぞらネット銀行の場合)
領収書は発行されません。支払いの記録は預金明細に残り、ペイジー納付の場合は「PE 地方税共同機構」と表示されます。金融機関のサイトに移動した後で操作を中断すると、支払いが完了しないことがあります。納付期限に余裕をもって手続きしてください。
6. 個人事業税は経費になる?ならない?
個人事業税は経費になります。勘定科目は「租税公課」です。
①事業用口座から支払った場合
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 租税公課 | 50,000 | 普通預金 | 50,000 |
②個人口座や個人カードで支払った場合
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 租税公課 | 50,000 | 事業主借 | 50,000 |
一方、所得税と住民税は経費になりません。事業のお金から支払った場合は「事業主貸」で処理します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 事業主貸 | 50,000 | 普通預金 | 50,000 |
個人事業税は事業にかかる税金、所得税と住民税は個人にかかる税金。この違いで扱いが分かれます。
なお、個人事業税を計上するとき、領収書は必須ではありません。納税通知書と預金明細(ペイジー納付なら「PE 地方税共同機構」と表示)があれば十分です。「融資や補助金の申請で必要では?」と心配になるかもしれませんが、必要なのは納税証明書で領収書では代用できません。都道府県税事務所で別途取得するため、領収書が出ない支払い方法を選んでも困ることはありません。
まとめ
- 個人事業税は法定70業種に当てはまる人だけにかかる
- 事業所得が290万円を超えると課税される。青色申告特別控除前の金額で判定するため、確定申告書の所得金額が290万円以下でも通知が来ることがある。
- 納税通知書は8月上旬~中旬に届く。納付期限は8月末/11月末の2回
- 支払いは手数料0円のeLTax(ペイジー)がおすすめ。
- 個人事業税は経費になる(租税公課)。所得税と住民税は経費にならない
個人事業税のように「毎年決まった時期に必ず出ていくお金」は、先に積み立てておくと資金繰りがラクになります。事業用口座とは別に積立費口座を持つ方法はこちらで解説しています。
▶ 個人事業主の口座は分けるべき?途中から分ける方法と仕訳を解説
初めて納税通知書が届いたときは「こんな税金があるの?」と慌てましたが、仕組みがわかれば手続き自体は簡単です。8月は第1期の期限が近いので、届いたら早めに納付しましょう。
記帳や申告のことで手が止まってしまうときは、一人で抱え込まないでくださいね。
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